
店舗:MORIUMIUS at home
( Brand Story )
2011年3月11日に発生した東日本大震災で、町の約8割が壊滅した宮城県石巻市雄勝町。「MORIUMIUS」は震災直後の炊き出しから活動が始まり、2015年に高台の廃校を利用してこどものための複合体験施設をオープンしました。今回は「こどもの食の学び体験を家庭に届けたい」という想いで生まれたという2種類のカレーにまつわるお話を伺いました。
お話を聞いた方
宮城県石巻市雄勝町で自然とともに暮らす体験ができる、こどものための複合体験施設「MORIUMIUS」。森と、海と、明日をつなげる、をテーマに掲げています。ここでこどもが体験した食や暮らしを家庭でも楽しんでいただきたい、という想いで始まったのが「MORIUMIUS at home」。海の恵みを閉じ込めたレトルトカレーや銀鮭のほぐし、自家栽培のブドウで醸造したワインなど、海と森に抱かれた三陸・雄勝町の豊かな自然が味わえる商品がそろいます。
○ Index
MORIUMIUSの活動がスタートしたきっかけを教えてください。
雄勝町は町の8割が森に抱かれ、深く静かな入り江の典型的なリアス海岸が特徴の町です。東日本大震災の震源地から一番近い町といわれ、到達した津波の高さは最大20m。町の8割は壊滅し、家や職場を失った人も多く、当時4000人いた人口はみるみる減少し、現在は1000人以下になりました。
甚大な被害を受けたんですね。
食品関係の仕事をしていた代表の立花は、震災後に沿岸部の炊き出しを行っていました。ボランティアでしたが徐々に義援金が集まるようになり、個人の口座で管理するわけにもいかず、法人化したのが「MORIUMIUS」です。活動をしていくうちに町との関係性も深まり、給食支援や学習支援も行うようになりました。
少しずつ活動の幅が広がっていったんですね。
最初は古民家を活用して、寺子屋のような学習支援をしたり、週末に漁業体験をしたりしていました。すると地元の方から「高台に廃校になった学校があるよ」と教えてもらい、この町のためになればと築100年の廃校を改修。2015年の夏にこどものための複合体験施設「MORIUMIUS」をオープンしました。
「MORIUMIUS」ではどんな体験ができるんですか?
1年間の漁村留学や1泊2日の自然体験などさまざまです。今回ご紹介する牡蠣のカレーが誕生したのは、ここでの食のプログラムがきっかけ。スパイスの専門家シャンカール・ノグチさんをお呼びして、「スパイスってなんだろう?」というところからこどもの学びを深め、一緒にカレーを作りました。
具体的にはどんなプログラムだったのでしょうか?
まず約30種類のスパイスを並べて、色や香りの違いを観察しました。また、スパイスの元になるのは植物の種や根っこなので、それらを人が食べられる状態に加工しているという過程も伝えることで「スパイスってなに?」という疑問を紐解いていきました。シャンカール・ノグチさんはスパイスをカレーに仕上げてくれましたが、絵描きさんに来ていただいたときには、「スパイスにはさまざまな色がある」というところから、スパイスを画材にして絵を描いてくれたことも。スパイスは食にもなり、アートにもなるんですよね。そうした体験や学びは施設のスタッフだけでは提供できないので、その道を究めたスペシャリストを招いたプログラムを開いています。
学びから生まれたカレーを加工品にして、家庭に届ける形にしたのはなぜでしょうか
立ち上げから2年経った頃、「こどもたちの体験の場がMORIUMIUSだけでいいのかな?」という課題が生まれました。というのも、ここで学んで行動が変化したこどもを見ていると、MORIUMIUSだけではなく家庭でも体験を通して変化していけるような機会があるといいなと感じていたんです。
しかし、宿泊業でいっぱいいっぱいで課題に取り組むリソースがなく、正解が見出せないままコロナ禍に突入。こどもたちが施設に来られなくなったので、今こそMORIUMIUSの学びを家庭に届けるときだと始めたのが「MORIUMIUS at home」。食の定期便からスタートして、家庭で簡単に食べていただけるレトルトカレーを形にしました。
食の学びから誕生した「ココナッツミルクと牡蠣のカレー」と「トマトと牡蠣のカレー」。
ぜひそれぞれの特徴を教えてください。
ココナッツミルクのカレーは甘口で、こどもでも食べやすい味わいにしています。牡蠣のペーストも加えているので、コク深さも魅力です。トマトのカレーは中辛で、トマトの酸味を際立たせたのと、マスタードシードを加えているので粒を噛むと爽やかな香りが口に広がるようになっています。
牡蠣は雄勝町産を使われているんですね。
実は、こどもたちとのスパイスワークショップではタコを材料に試行錯誤していました。ただ、加工品として常時安定的に提供するためには牡蠣がベストだったのと、雄勝町産のおいしい牡蠣を楽しんでいただくために選びました。
見た目も味も牡蠣の存在感がありますよね。
ありがとうございます。雄勝町は養殖が盛んで、カレーで使う牡蠣は町の漁師さんから仕入れています。雄勝湾は牡蠣の餌になるプランクトンもたくさんいて、ミネラルも豊富。粒が大きくて、ミルキーさもありつつ塩味が効いた牡蠣に育ちます。カレーのなかにもゴロっと2粒入っているので、存分に味わっていただけます。
スパイスにもこだわっているそうですね。
そうなんです。「海沿いの町らしいカレーがいいよね」ということでパンチフォロンといわれるミックススパイスを使用しています。これはインドではよく使われているもので、魚料理に合うようにクミン、フェヌグリーク、ニゲラ、フェンネル、ブラウンマスタードシードの5種類が調合されています。
インドから直接仕入れていて、さらに体にいい料理を追求したいという想いで、食品添加物無添加というこだわりも。パンチフォロンは日本でも販売しているところはまだあまりないので、ぜひおいしさや香りを楽しんでいただきたいですね。
ココナッツミルクと牡蠣のカレーは、ターメリックで色を付けています。着色料を使わず、こどもが食べても消化・吸収に良いように気をつけました。ただ、この色味は作りたてだともっと鮮やかで、レトルト加工する過程でくすんでしまう。そのためターメリックの量はかなり調整しましたね。見た目でもおいしさを伝えたかったので、色味の調整は一番時間がかかったところかもしれません。
今後「MORIUMIUS」として挑戦したいことはありますか?
施設では漁村留学で県外のこどもを受け入れて、一年間一緒に暮らしながら地元の学校に通ってもらいます。現在、町の小・中学校は全校児童が30人ほどなので、たとえば小学生が2人、中学生が2人増えるだけでもインパクトが大きいんです。このままでは閉校になり、人口流出にもつながるので、そのストッパーになれたらと考えています。
漁村留学ではどんな体験ができるんですか?
ご飯を炊くための燃料を森のなかで集めたり、食料を調達するために漁師さんの手伝いをしたりと、暮らしをベースにした体験がメインです。漁村留学棟があるので、そこで親元を離れて共同生活をしながら、こどもたちと一緒に暮らしを作っています。
町として挑戦したいことはいかがでしょうか?
町の復興が終わり、3年前からようやくまちづくりのフェーズに突入しました。町全体を公園化する計画で、津波の被害を受けたエリアを農地化して、ハーブガーデンにしたり、桜並木を作ったりとさまざまな活動を進めています。MORIUMIUSとしては、ブドウ畑とワイナリーを整備してワインづくりにチャレンジ。ワイン×まちづくりの視点でも頑張っていけたらと思っています。
「贈り物や特別な日の食卓など、ハレの日に食べてほしいです」と山口さん。体にいい料理を常に追求するMORIUMIUSの想いとこどもたちの学びが詰まったカレーをお楽しみください。